新会社法施行において株式会社に必要な手続き
1.新会社法施行後すぐにすること
・定款の整備
株主や債権者からの定款の閲覧、謄写請求に備えて、整備法を適用した場合に自社の定款がどのようにみなされるのかを確認し、整備しておく必要があります。
ここで、定款変更手続きが必要なのかということが問題です。この点は、整備法によって既存の定款には一定の定めがあるものとみなされるため、そのような事項については、定款変更の手続きをする必要はなく、新会社法施行とともに、定款変更の効力が発生すると考えられます。つまり、整備法によりみなし規定とされている事項については、株主総会の特別決議は不要と言えます。
本来は不要なのですが、実務慣行からすると、みなし規定に基づく定款変更に関しても株主総会決議を経るという会社もあるでしょう。その場合に注意すべき点として、従来のように定款変更すべてを一括議案として付議するかどうかということに関しては、気をつけるべきでしょう。一括議案としたために、すべての定款変更を否決されてしまうという事態が起こりかねません。これを回避するために、「整備法のみなし規定に基づく定款変更の議案」と「その他の定款変更についての議案」などのように、議案を複数にわけて、それぞれについて決議するといった工夫が必要でしょう。
それから、株主総会の決議を経るとした場合には、その決議がでるまでの間に閲覧謄写請求がなされることに備えて、株主や債権者向けの書面を用意しておくといいでしょう。
・具体的な定款の変更
まずは、前述のように、整備法によるみなし規定を定款に反映させる必要がありますが、それ以外にも、新会社法ではいくつか用語の変更もなされたり、定款規定の根拠となる条文の変更がされるので、それらに合わせて定款の文言等を変更する必要があります。この3つは最低限しておきたい対応です。
対応としてはもう1つ、新会社法により新たに定款に定めることが認められるようになった事項の追加があります。これについて定款変更をするかどうかは、各会社の選択に委ねられていますから、どうしても変更しなければならないというわけではありません。
自分の会社にメリットがあるか、また導入時期等について検討した上で対応してください。
2.新会社法施行後初めて開催される取締役会ですること
・内部統制システムの構築
新会社法では、大会社については内部統制システムを整備する義務があると規定されています。ここでの大会社とは、資本の額が5億円以上、又は負債の合計額が200億円以上の会社をいいます。
内部統制システムとは、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制のことです。
この内部統制システムを整備するために、取締役会で決議する必要があります。注意する点として、いつまでに整備を行う必要があるかということです。この点については、新会社法施行日以後最初に開催される取締役会で決議すればよいこことされています。しかし逆に言うと、その最初の取締役会では必ず決議しなければならないのです。ですから、あらかじめ日程を確認した上で、準備をしておく必要があります。
内部統制システムについて決議した場合には、決議内容を事業報告書に記載する必要があります。これは、平成18年3月決算の会社だとしたら、平成19年3月末日に終了する事業年度に関する事業報告から記載すればよいとされています。
3.新会社法施行後初めて開催される株主総会ですること
・定款の変更手続き
これは上で述べたとおり、株主総会の決議を経るか否かというのは、各会社の判断にまかされています。
・社外監査役の要件充足
監査役会設置会社である場合、平成18年の定時総会において、「半数以上は社外監査役でなければならない」という監査役の要件を充足する必要があります。これは平成13年の商法改正から引き継がれている内容です。しかし、すでに13年改正法に対応している会社でも注意が必要です。
新会社法施行により、子会社の概念が現行商法の「総株主の議決権の過半数を有する株式会社」というものから、「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令でさだめるもの」という概念に拡張されます。これにより、既存の社外監査役が、社外監査役の要件を充足しなくなる可能性があるからです。
また、すでに社外監査役の候補者がいる場合にも、子会社の概念が拡張された新会社法の下でも、要件を充足しているのかを確認する必要があるでしょう。
4.新会社法施行の日から6ヶ月以内にすること
大会社の場合
・監査役会設置会社である旨の登記
・監査役のうち社外監査役である者については社外監査役である旨の登記
・会計監査人設置会社である旨の登記
・会計監査人の氏名または名称の登記
既存の委員会等設置会社以外の大会社は、監査役会、会計監査人の設置が義務付けられていますが、上の事項を会社の本店所在地において登記しなければなりません。
注意事項として、「6ヶ月以内」とされていますが、他の登記をすることがあれば、それにあわせてこちらも登記しなければなりません。
数種の株式を発行している会社の場合
・議決権制限株式の少数株主権等に関する事項の登記
・種類株主総会に関する事項の登記
・転換予約権付株式に関する事項の登記
・強制転換条項付株式に関する事項の登記
・建設利息に関する事項の登記
・配当可能利益による株式消却に関する事項の登記
既存の株式会社に上にあげた登記がある場合には、本店所在地において、会社法911条3項7号及び9号に掲げる登記、12号に掲げる事項の変更の登記をしなければならないのです。
既存の株式会社が、(1)償還株式(2)転換予約権付株式(3)強制転換条項付株式を発行している会社で、整備法のみなし規定によりみなされた種類の株式となる場合にも、6ヶ月以内に登記をしなければなりません。
こちらも大会社の場合と同様、「6ヶ月以内」とされていますが、他の登記をすることがあれば、それにあわせて登記しなければなりません。
5.直前決算期の次の決算期からすること
・株主資本等変動計算書の作成
新会社法ではすべての株式会社に、「貸借対照表」、「損益計算書」、「その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省で定めるもの」を作成しなければならないという義務が課されました。
この、「その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省で定めるもの」とは具体的には、株主資本等計算書及び個別注記表のことを言います。
では、いつからこの計算書を作成すればいいのでしょうか。この点については、新会社法施行後に終了する事業年度からでよいとされています。つまり、直前決算期は、現行商法の規定に基づいて行うこととされています。
役員賞与支給についての株主総会決議
現行商法では、「役員報酬」の他に利益処分案に「役員賞与」の金額を盛り込んで、その利益処分案について株主総会の承認を経るというやり方で、「役員賞与」を支給している会社が多いでしょう。
新会社法では、役員が職務執行の対価として会社から受け取る財産上の利益として、報酬も賞与も同一に取扱われることになりました。つまり、「役員報酬」だけでなく「役員賞与」についても、定款に規定がない場合は、株主総会の決議を経てこれを支給することになります。
では、いつからこの変更に対応しなければならないのでしょうか。この点においては、3月決算の会社であれば、平成18年3月決算における役員賞与については、現行商法に基づき、利益処分により支給することが認められていますが、このケースでも361条の報酬決議も併せて必要であるとされています。
現行商法でも、新会社法でも「役員賞与」を支給するためには、株主総会の決議又は承認が必要なので、その点では大きな違いはないように思えるかもしれませんが、報酬決議については、利益処分案の承認などの単純な場合とは違って、その支払い理由を説明しなければならない点で注意が必要です。

